<発表のポイント>
・これまで、アジド化合物と有機金属試薬を用いた反応では、トリアゼン誘導体を与えることが知られており、近年では、基質の選択や触媒の添加によって2級アミンを得る方法が報告されていました。
・アジド基とヘミアミナール構造を併せ持つ新規アジドインドリン誘導体「AZIHY」を開発し、Grignard試薬との反応を行いました。
・AZIHYをGrignard試薬と反応させる際、反応溶液の濃度や温度といった条件が変化すると、それぞれで優先して得られる生成物も異なることを見出しました。
・今後、AZIHYを利用した反応開拓や、生理活性物質の合成へと応用される可能性があります。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院医歯薬学総合研究科(薬)精密有機合成化学分野の山城寿樹大学院生(研究当時。同博士課程修了。現・北海道医療大学薬学部助教)、岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野の阿部匠講師は、アジドインドリンとヘミアミナールの両方の性質を併せ持つ新規アジドインドリン誘導体「AZIHY」を開発し、AZIHYとGrignard試薬を用いた反応において、反応条件の変化による生成物の作り分けに成功しました。

 本手法は、金属触媒や特殊な反応剤を必要とせず、反応溶液の濃度や温度の変化のみで異なる生成物を得ることが可能な環境負荷の低い手法です。

 本研究成果は、2024年5月30日  、イギリスの科学誌「Chemical Communications」に掲載されました。
 これにより得られる3-アミノインドリン誘導体および2'-アミノアリール酢酸誘導体は、いずれも生理活性物質の骨格であることから、今後の医薬品開発への応用が期待されます。


◆研究者らからのひとこと
 アジドインドリン誘導体の新たな1ページをようやく世に送り出すことができました。紆余曲折ありましたが、アジド基とヘミアミナール構造が手を取り合って、インドールの枠組みを壊しながら独自の道を歩み始めたことは大変喜ばしい思いです。
 これからも、アジド基とともに「合成は爆発」の気持ちで、本当に爆発はしないよう心がけつつ進んでいければと思います。


◆論文情報
 論文名: Switchable Synthesis of 3-Aminoindolines and 2’-Aminoarylacetic Acids Using Grignard Reagents and 3-Azido-2-hydroxyindolines
 掲載誌: Chemical Communications
 著 者: Toshiki Yamashiro, Takumi Abe
 D O I: https://doi.org/10.1039/D4CC01448K


◆研究資金
 本研究は科学研究費補助金(22K06503)の支援を受けて実施しました。山城博士は「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ(略称:OUフェローシップ)タイプB」、並びに日本薬学会長井記念薬学研究奨励支援事業の採用者であり今後の活躍が期待されています。


◆詳しい研究内容について
 反応溶液の濃度や温度の変化のみで異なる2つの生成物を選択的に得ることに成功!~医薬品の骨格となる生成物を低環境負荷で合成可能に~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20240607-1.pdf


◆詳しいプレスリリースについて
 40年未達成であった(±)-rivularin Aの全合成に世界で初めて成功!~Rivularin Aの毒性を生かした新規医薬品の開発に期待~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20231211-1.pdf


◆参 考
・岡山大学薬学部・大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)精密有機合成化学分野
 https://sites.google.com/s.okayama-u.ac.jp/pharm-fineorganicsynthesis/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0


◆参考情報
・【岡山大学】天然物の超難問 幻のインドールアルカロイドの正体を解き明かせ!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001540.000072793.html
・【岡山大学】アジド基を利用した深海細菌産生インドールアルカロイド骨格の一挙構築
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001299.000072793.html
・【岡山大学】世界初!極性転換スイッチを利用し、鎖状インドール5量体の合成に成功!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001310.000072793.html
・【岡山大学】40年未達成であった(±)-rivularin Aの全合成に世界で初めて成功!~Rivularin Aの毒性を生かした新規医薬品の開発に期待~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001895.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬域(薬)講師 阿部 匠
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/research/list/2_1/

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html