<発表のポイント>
・カーボンナノチューブ(CNT)紡績糸(CNT紡績糸)を用いて、低温域で高い熱電性能を実現しました。
・CNT紡績糸を高結晶化し、効率的に半導体材料中の自由電子の数を増加させるn型ドーピングを行う手法を開発しました。
・開発した手法を用いて、π型の熱電変換モジュールの作製と低温域動作に成功しました。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院自然科学研究科の亀高諄大学院生(研究当時、現・ローム株式会社)、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(工)の鈴木弘朗研究准教授、西川亘助教、林靖彦教授らは、東京工業大学のSergei Manzhos准教授、Southern University of Science and Technology(中国)のAung Ko Ko Kyaw准教授と共同で、CNTを無数に束ねた糸である「CNT紡績糸」を高結晶化する通電加熱処理とn型ドーピングのプロセス開発によって、低温域(150℃以下)での高い熱電変換性能を実現しました。

 本研究成果は、2024年3月12日  にWiley社発行の学術雑誌「Small Methods」に掲載されました。
 
 低温で動作する熱電変換素子は、工場や車体の排熱や人体の熱などの未利用で捨てられていた日常生活で発生する温度帯の低温排熱を有効活用するエネルギーハーベスティング技術に必要不可欠です。これまで、Bi2Se3などの無機材料が低温域での熱電変換材料として検討されてきましたが、毒性や加工性、柔軟性の低さが問題になっていました。

 一方でCNT紡績糸は超軽量でフレキシブル性や人体適合性をもち、かつ低温域で熱電変換が可能なことから、次世代のInternet of Everything(IoE)デバイスへの応用や宇宙ステーションなどの極限環境での利用が期待できます。

 本研究で高い熱電変換性能をもつCNT紡績糸を実現したことで、これらのIoEシステムの高度化や熱電変換素子の応用範囲の拡大と普及に大きく寄与します。

 本情報は、2024年4月30日  に岡山大学から公開されました。


◆亀高諄大学院生(当時)と鈴木弘朗研究准教授からのひとこと
 研究室に所属してからCNTについて勉強し、3年間の研究成果を論文に残せたことを大変嬉しく思います。助言してくださった教員の方々には感謝申し上げます。(亀高)
 多くの学生や共同研究者の協力があっての成果です。地道な実験を繰り返すことがブレイクスルーのきっかけを生むのだと改めて実感しました。(鈴木)


◆論文情報
 論 文 名:N-DMBI Doping of Carbon Nanotube Yarns for Achieving High n-Type Thermoelectric Power Factor and Figure of Merit
 掲 載 紙: Small Methods
 著  者: Hiroo Suzuki*, Jun Kametaka, Shinya Nakahori, Yuichiro Tanaka, Mizuki Iwahara, Haolu Lin, Sergei Manzhos, Aung Ko Ko Kyaw, Takeshi Nishikawa, and Yasuhiko Hayashi*
 D O I: 10.1002/smtd.202301387
 U R L: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/smtd.202301387


◆研究資金
 本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(B)(JP21H01371)の支援を受けて実施しました。


◆詳しい研究内容について
 工場や車体の排熱を電気に変える!高い熱電変換性能と安定性を持つ「n型カーボンナノチューブ糸」の作製に成功
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20240430-1.pdf


◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)ナノデバイス・材料物性学研究室
 https://hayashi-lab.org/
・岡山大学大学院 環境生命自然科学研究科
 https://www.elst.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 工学部
 https://www.engr.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報
・【岡山大学】次世代太陽電池・ペロブスカイト太陽電池の欠点を補完する画期的な添加材“ベンゾフェノン”を発見!~性能と耐環境性の向上により、再生可能エネルギーの発展に貢献~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001930.000072793.html
・【岡山大学】ヤーヌス構造をもつ二次元半導体の生成と生成過程の解析に成功 ~二次元半導体の新しいデバイス応用展開に期待~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001426.000072793.html
・【岡山大学】原子層半導体の一次元構造化に成功 ~次世代ナノスケール光電子デバイスへの応用に期待~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001417.000072793.html
・【岡山大学】閉じ込め空間を利用した原子レベルに薄い半導体の大面積・高品質合成に成功~次世代フレキシブル光電子デバイスの実現に期待~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000764.000072793.html
・【岡山大学】メモリスティブな振る舞いを持つ新規材料を発見 ~人間と同様の思考を持つコンピュータの実現に向けて~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000224.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工)
 研究准教授 鈴木弘朗
 教授 林 靖彦
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 工学部3号館
 TEL:
 FAX:
 https://hayashi-lab.org/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html