<発表のポイント>
・特定のアミノ酸に富むタンパク質の合成は確率的に中断(強制終了)される場合があるものの、そのメカニズムは不明でした。
・上記の合成中断は1. 非典型的な翻訳終結反応、2. 合成途上での異常なリボソームリサイクル反応のいずれかによって引き起こされることが明らかとなりました。
・合成中断はタンパク質合成の滞りや温度条件に左右され、ストレス条件でより頻繁にタンパク質合成の異常が発生していることが示唆されました。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院環境生命自然科学学域の茶谷悠平准教授と東京工業大学科学技術創成研究院の田口英樹教授の合同研究チームは、これまで不明だったタンパク質合成中断のメカニズムを解明しました。
生命を形作るタンパク質は、DNAの遺伝子配列をもとに、細胞内装置リボソームによって合成されます。リボソームは遺伝子配列を途切れることなくアミノ酸へと変換、連結することで、タンパク質を合成(翻訳)します。しかし、負電荷に富むアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を立て続けに翻訳すると、一部のリボソームは合成を中断してしまうことが明らかにされていました。しかし、なぜ合成が中断されるのか、その分子メカニズムはこれまで不明でした。
研究チームは試験管内の再構成実験から、上記の問題解決に臨み、研究の結果、合成中断は通常とは異なるメカニズムで新生タンパク質がリボソームから切り離されるか、合成中には作用しないはずのリボソームリサイクル経路の働きによって引き起こされていることが明らかとなりました。また、合成中断は、タンパク質合成が滞りがちな栄養枯渇や高温などストレス条件で、より起こりやすくなることも示唆されました。
正確に遺伝子を発現させることは生命活動の大前提ですが、本研究からその障害となる異常反応の詳細なメカニズムが明らかとなり、より効率的なタンパク質発現を実現させる遺伝子設計、技術開発などが可能になると期待されます。
本研究は米国学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に2023年12月9日 に掲載されました。
◆茶谷悠平准教授からのひとこと
リボソームが負電荷アミノ酸の合成を苦手とすることを発見したのが2014 年、それからおおよそ 10 年続けてきた研究の、一つの重要な到達点と考えています。アミノ酸配列によるタンパク質合成の中断は、今回モデルに使用した大腸菌のみならず、ヒトなど真核生物でも発生しますので、我々ヒトなどの細胞中でこうした異常(制御)がどのような意義を持って発生しているか、また負電荷アミノ酸の翻訳で合成中断が起こる根本の原因(リボソームの構造変化)について、今後さらに研究していきたいと考えています。ご興味を持っていただけましたら、ぜひご連絡ください。
◆論文情報
論 文 名:Mechanistic dissection of premature translation termination induced by acidic residues-enriched nascent peptide
掲 載 紙:Cell Reports
著 者:Yuhei Chadani, Takashi Kanamori, Tatsuya Niwa, Kazuya Ichihara, Keiichi I. Nakayama, Akinobu Matsumoto, and Hideki Taguchi
D O I:10.1016/j.celrep.2023.113569
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124723015814
◆研究資金
本研究は、日本学術振興会科研費(JP26116002, JP18H03984, JP20H05925, 17K15062, 19K16038)、大隅基礎科学創成財団(第3期研究助成)の支援を受けて実施しました。
◆詳しいプレスリリースについて
リボソームがタンパク質の合成を中断する仕組みを解明!~疾患原因の解明や、効率的なタンパク質生産を実現する遺伝子設計、技術開発へ期待~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20240115-1.pdf
◆参 考
・岡山大学理学部
https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部生物学科
https://www.okayama-u.ac.jp/user/biology/index.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授 茶谷 悠平
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:
FAX:
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1180.html
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html
・特定のアミノ酸に富むタンパク質の合成は確率的に中断(強制終了)される場合があるものの、そのメカニズムは不明でした。
・上記の合成中断は1. 非典型的な翻訳終結反応、2. 合成途上での異常なリボソームリサイクル反応のいずれかによって引き起こされることが明らかとなりました。
・合成中断はタンパク質合成の滞りや温度条件に左右され、ストレス条件でより頻繁にタンパク質合成の異常が発生していることが示唆されました。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院環境生命自然科学学域の茶谷悠平准教授と東京工業大学科学技術創成研究院の田口英樹教授の合同研究チームは、これまで不明だったタンパク質合成中断のメカニズムを解明しました。
生命を形作るタンパク質は、DNAの遺伝子配列をもとに、細胞内装置リボソームによって合成されます。リボソームは遺伝子配列を途切れることなくアミノ酸へと変換、連結することで、タンパク質を合成(翻訳)します。しかし、負電荷に富むアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を立て続けに翻訳すると、一部のリボソームは合成を中断してしまうことが明らかにされていました。しかし、なぜ合成が中断されるのか、その分子メカニズムはこれまで不明でした。
研究チームは試験管内の再構成実験から、上記の問題解決に臨み、研究の結果、合成中断は通常とは異なるメカニズムで新生タンパク質がリボソームから切り離されるか、合成中には作用しないはずのリボソームリサイクル経路の働きによって引き起こされていることが明らかとなりました。また、合成中断は、タンパク質合成が滞りがちな栄養枯渇や高温などストレス条件で、より起こりやすくなることも示唆されました。
正確に遺伝子を発現させることは生命活動の大前提ですが、本研究からその障害となる異常反応の詳細なメカニズムが明らかとなり、より効率的なタンパク質発現を実現させる遺伝子設計、技術開発などが可能になると期待されます。
本研究は米国学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に2023年12月9日 に掲載されました。
◆茶谷悠平准教授からのひとこと
リボソームが負電荷アミノ酸の合成を苦手とすることを発見したのが2014 年、それからおおよそ 10 年続けてきた研究の、一つの重要な到達点と考えています。アミノ酸配列によるタンパク質合成の中断は、今回モデルに使用した大腸菌のみならず、ヒトなど真核生物でも発生しますので、我々ヒトなどの細胞中でこうした異常(制御)がどのような意義を持って発生しているか、また負電荷アミノ酸の翻訳で合成中断が起こる根本の原因(リボソームの構造変化)について、今後さらに研究していきたいと考えています。ご興味を持っていただけましたら、ぜひご連絡ください。
◆論文情報
論 文 名:Mechanistic dissection of premature translation termination induced by acidic residues-enriched nascent peptide
掲 載 紙:Cell Reports
著 者:Yuhei Chadani, Takashi Kanamori, Tatsuya Niwa, Kazuya Ichihara, Keiichi I. Nakayama, Akinobu Matsumoto, and Hideki Taguchi
D O I:10.1016/j.celrep.2023.113569
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124723015814
◆研究資金
本研究は、日本学術振興会科研費(JP26116002, JP18H03984, JP20H05925, 17K15062, 19K16038)、大隅基礎科学創成財団(第3期研究助成)の支援を受けて実施しました。
◆詳しいプレスリリースについて
リボソームがタンパク質の合成を中断する仕組みを解明!~疾患原因の解明や、効率的なタンパク質生産を実現する遺伝子設計、技術開発へ期待~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20240115-1.pdf
◆参 考
・岡山大学理学部
https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部生物学科
https://www.okayama-u.ac.jp/user/biology/index.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授 茶谷 悠平
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:
FAX:
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1180.html
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html