<発表のポイント>
・栽培柿の主要品種「太秋」の全ゲノム情報を解読しました。
・ゲノム情報から栽培柿に独自の果実形質の進化や重要となる遺伝子領域を明らかにしました。
・栽培柿における「壊れた性染色体」の進化過程を明らかにしました。
◆概 要
生物が生きる上で最低限必要な遺伝子情報のセットを「ゲノム」と呼びます。ヒトを含む多くの生物は2セットのゲノムを持つ「二倍体」ですが、植物、特に栽培される作物の中には、複数セットのゲノムを持つ「倍数体」が多く存在します。
私たちが普段食べている栽培柿も倍数体であり、6セットのゲノムを持つ「六倍体」です。栽培柿には、「さるかに合戦」で有名な甘柿・渋柿のほか、多様な果実の形、一本の樹の中で揺らぐ性別(雄花・雌花・両性花)、などユニークな形質があります。これらの形質は、近縁野生種には見られず、六倍体の栽培柿が倍数性進化や栽培化の過程で手に入れてきたものであると考えられています。
このたび、国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院環境生命自然科学学域(農)赤木剛士教授と堀内綾乃大学院生(修士課程2年)は、栽培柿の主要品種である「太秋」の全ゲノム情報を高精度に解読し、そのDNA配列情報から、近縁種との分岐や栽培柿が六倍体になった年代や「壊れた性染色体」を成立させた進化過程を明らかにしました。
さらに、日本国内に存在する約170の栽培柿品種群の全ゲノムデータを用いることで、日本の栽培柿が特定の栽培化ルーツを持つわけではなく品種群ごとに独立してバラバラに分化してきた過程、そして甘柿・渋柿の違い・多様な果実の形など、栽培柿が進化の中で独自に手に入れたと考えられる有用形質に重要な遺伝子群の存在領域を特定しました。
本研究により、本来解析が難しいと言われていた六倍体の栽培柿の遺伝解析基盤を作り、その独自の進化や有用形質に関する知見を得ることができました。
本成果のうち全ゲノム解読および性別の進化に関する内容は進化学の国際論文誌「Molecular Biology and Evolution」に、栽培柿の品種分化や果実形質の進化に関する内容はゲノム科学の国際論文誌「DNA Research」に掲載されました。
本研究は、かずさDNA研究所、農研機構果樹茶業研究部門との共同研究として行われ、2023年7月12日 に岡山大学よりプレスリリースされました。
◆論文情報1
論 文 名:Ongoing rapid evolution of a post-Y region revealed by chromosome-scale genome assembly of a hexaploid monoecious persimmon (Diospyros kaki)
掲 載 紙:Molecular Biology and Evolution
著 者:Ayano Horiuchi, Kanae Masuda, Kenta Shirasawa, Noriyuki Onoue, Naoko Fujita, Koichiro Ushijima, Takashi Akagi*
D O I:https://doi.org/10.1093/molbev/msad151
U R L:https://academic.oup.com/mbe/advance-article/doi/10.1093/molbev/msad151/7219670
◆論文情報2
論 文 名:Genetic basis of lineage-specific evolution of fruit traits in hexaploid persimmon
掲 載 紙:DNA Research
著 者:Ayano Horiuchi, Kanae Masuda, Kenta Shirasawa, Noriyuki Onoue, Ryusuke Matsuzaki, Ryutaro Tao, Yasutaka Kubo, Koichiro Ushijima, Takashi Akagi*
D O I:https://doi.org/10.1093/dnares/dsad015
U R L:https://academic.oup.com/dnaresearch/advance-article/doi/10.1093/dnares/dsad015/7199341
◆研究資金
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「フィールドにおける植物の生命現象の制御に向けた次世代基盤技術の創出(研究総括:岡田 清孝)」における研究課題「カキ属をモデルとした環境応答性の性表現多様化機構の解明(JPMJPR15Q1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2015年12月 〜2019年3月 )、さきがけ「植物分子の機能と制御(研究総括:西谷 和彦)」における研究課題「ゲノム・遺伝子倍化が駆動する植物分子の新機能の探索とデザイン(JPMJPR20D1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2020年12月 〜2024年3月 )、学術変革領域 (A)「挑戦的両性花原理(22H05172)」(領域代表:赤木剛士)における「植物の「可塑的な性」を駆動するゲノム動態原理(22H05173)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2022年7月 〜2027 年3月)と「横断的ゲノム比較から俯瞰する両性花多様化の変遷(22H05181)」(研究者:白澤健太、研究期間:2022年7月 〜2027 年3月)の支援を受けて実施しました。
◆詳しい研究内容について
栽培柿の高精度全ゲノム解読 ~果実や性別の進化を解明
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230712-1.pdf
◆参 考
・岡山大学 農学部 赤木研究室
https://www.okayama-u.ac.jp/user/ushijima/phlab/index.html
・【岡山大学】赤木剛士研究教授(農)が「令和4年度学術変革領域研究(A)」に領域代表として採択
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000831.000072793.html
◆参考情報
・キウイフルーツが紐解く「植物が性別を手に入れた進化の仕組み」
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id652.html
・AIが見抜く「柿」の内情~「人工的なプロ」から学ぶ果実選びのコツ
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id788.html
・「柿」の全ゲノム解読 ~ 植物における「性の進化」のヒント
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id701.html
・赤木剛士准教授(農)が文部科学大臣表彰を受賞
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8529.html
・【岡山大学】AIが覗き込むトマトゲノム:果実の遺伝子の動きを見抜く~果実が「熟れる」仕組みの緻密なデザイン~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000560.000072793.html
・【岡山大学】柿の花が解き明かす「植物の揺らぐ性」の進化 ~作物の性別を制御して効率的な作物生産や品種改良につながる技術へ~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000580.000072793.html
・【岡山大学】キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001312.000072793.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農) 教授 赤木剛士
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
E-mail:takashia◎okayama-u.ac.jp
※◎を@に置き換えて下さい
TEL:
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください
・栽培柿の主要品種「太秋」の全ゲノム情報を解読しました。
・ゲノム情報から栽培柿に独自の果実形質の進化や重要となる遺伝子領域を明らかにしました。
・栽培柿における「壊れた性染色体」の進化過程を明らかにしました。
◆概 要
生物が生きる上で最低限必要な遺伝子情報のセットを「ゲノム」と呼びます。ヒトを含む多くの生物は2セットのゲノムを持つ「二倍体」ですが、植物、特に栽培される作物の中には、複数セットのゲノムを持つ「倍数体」が多く存在します。
私たちが普段食べている栽培柿も倍数体であり、6セットのゲノムを持つ「六倍体」です。栽培柿には、「さるかに合戦」で有名な甘柿・渋柿のほか、多様な果実の形、一本の樹の中で揺らぐ性別(雄花・雌花・両性花)、などユニークな形質があります。これらの形質は、近縁野生種には見られず、六倍体の栽培柿が倍数性進化や栽培化の過程で手に入れてきたものであると考えられています。
このたび、国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院環境生命自然科学学域(農)赤木剛士教授と堀内綾乃大学院生(修士課程2年)は、栽培柿の主要品種である「太秋」の全ゲノム情報を高精度に解読し、そのDNA配列情報から、近縁種との分岐や栽培柿が六倍体になった年代や「壊れた性染色体」を成立させた進化過程を明らかにしました。
さらに、日本国内に存在する約170の栽培柿品種群の全ゲノムデータを用いることで、日本の栽培柿が特定の栽培化ルーツを持つわけではなく品種群ごとに独立してバラバラに分化してきた過程、そして甘柿・渋柿の違い・多様な果実の形など、栽培柿が進化の中で独自に手に入れたと考えられる有用形質に重要な遺伝子群の存在領域を特定しました。
本研究により、本来解析が難しいと言われていた六倍体の栽培柿の遺伝解析基盤を作り、その独自の進化や有用形質に関する知見を得ることができました。
本成果のうち全ゲノム解読および性別の進化に関する内容は進化学の国際論文誌「Molecular Biology and Evolution」に、栽培柿の品種分化や果実形質の進化に関する内容はゲノム科学の国際論文誌「DNA Research」に掲載されました。
本研究は、かずさDNA研究所、農研機構果樹茶業研究部門との共同研究として行われ、2023年7月12日 に岡山大学よりプレスリリースされました。
◆論文情報1
論 文 名:Ongoing rapid evolution of a post-Y region revealed by chromosome-scale genome assembly of a hexaploid monoecious persimmon (Diospyros kaki)
掲 載 紙:Molecular Biology and Evolution
著 者:Ayano Horiuchi, Kanae Masuda, Kenta Shirasawa, Noriyuki Onoue, Naoko Fujita, Koichiro Ushijima, Takashi Akagi*
D O I:https://doi.org/10.1093/molbev/msad151
U R L:https://academic.oup.com/mbe/advance-article/doi/10.1093/molbev/msad151/7219670
◆論文情報2
論 文 名:Genetic basis of lineage-specific evolution of fruit traits in hexaploid persimmon
掲 載 紙:DNA Research
著 者:Ayano Horiuchi, Kanae Masuda, Kenta Shirasawa, Noriyuki Onoue, Ryusuke Matsuzaki, Ryutaro Tao, Yasutaka Kubo, Koichiro Ushijima, Takashi Akagi*
D O I:https://doi.org/10.1093/dnares/dsad015
U R L:https://academic.oup.com/dnaresearch/advance-article/doi/10.1093/dnares/dsad015/7199341
◆研究資金
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「フィールドにおける植物の生命現象の制御に向けた次世代基盤技術の創出(研究総括:岡田 清孝)」における研究課題「カキ属をモデルとした環境応答性の性表現多様化機構の解明(JPMJPR15Q1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2015年12月 〜2019年3月 )、さきがけ「植物分子の機能と制御(研究総括:西谷 和彦)」における研究課題「ゲノム・遺伝子倍化が駆動する植物分子の新機能の探索とデザイン(JPMJPR20D1)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2020年12月 〜2024年3月 )、学術変革領域 (A)「挑戦的両性花原理(22H05172)」(領域代表:赤木剛士)における「植物の「可塑的な性」を駆動するゲノム動態原理(22H05173)」(研究者:赤木剛士、研究期間:2022年7月 〜2027 年3月)と「横断的ゲノム比較から俯瞰する両性花多様化の変遷(22H05181)」(研究者:白澤健太、研究期間:2022年7月 〜2027 年3月)の支援を受けて実施しました。
◆詳しい研究内容について
栽培柿の高精度全ゲノム解読 ~果実や性別の進化を解明
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230712-1.pdf
◆参 考
・岡山大学 農学部 赤木研究室
https://www.okayama-u.ac.jp/user/ushijima/phlab/index.html
・【岡山大学】赤木剛士研究教授(農)が「令和4年度学術変革領域研究(A)」に領域代表として採択
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000831.000072793.html
◆参考情報
・キウイフルーツが紐解く「植物が性別を手に入れた進化の仕組み」
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id652.html
・AIが見抜く「柿」の内情~「人工的なプロ」から学ぶ果実選びのコツ
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id788.html
・「柿」の全ゲノム解読 ~ 植物における「性の進化」のヒント
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id701.html
・赤木剛士准教授(農)が文部科学大臣表彰を受賞
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id8529.html
・【岡山大学】AIが覗き込むトマトゲノム:果実の遺伝子の動きを見抜く~果実が「熟れる」仕組みの緻密なデザイン~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000560.000072793.html
・【岡山大学】柿の花が解き明かす「植物の揺らぐ性」の進化 ~作物の性別を制御して効率的な作物生産や品種改良につながる技術へ~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000580.000072793.html
・【岡山大学】キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001312.000072793.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農) 教授 赤木剛士
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
E-mail:takashia◎okayama-u.ac.jp
※◎を@に置き換えて下さい
TEL:
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください