<発表のポイント>
・体内への薬物送達には、内部に薬物が封入されたナノメートルサイズのカプセル(リポソーム、ポリマーなど)が用いられています。
・ナノカプセルは、「ジレンマ」(効果部位以外では壊れずに、効果部位では壊れて薬物を放出する必要性)を抱えています。
・本研究では、このジレンマを解決しうる、「光で壊れるリポソーム」を開発し、薬物送達に応用しました。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の学術研究院医歯薬学域(薬)の須藤雄気教授と同大学院医歯薬学総合研究科・博士前期課程(薬)の恒石泰地氏(令和4年卒)は、北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授らと共同で、光受容タンパク質であるロドプシンを利用して、緑色の光で壊れるリポソームを開発し、薬物送達に応用できることを示しました。

 体内への薬物送達では、狙った「時間・場所」に適切な「量」を効果部位に届けるため、ナノカプセル(リポソーム、ポリマーなど)が用いられています。ここで、ナノカプセルは効果部位以外では壊れず、効果部位ではその中身を放出するために壊れる必要性があり、「壊れずに壊れる」という「ジレンマ」を抱えています。

 今回開発した光誘起崩壊リポソーム(LiDLと命名)は、光がなければ壊れず&光があたると壊れるものであり、光でこのジレンマを解決しうるものです。

 これらの研究成果は2023年5月23日  、英国の総合化学雑誌「Chemical Communications」に掲載されました。

 なお本件は、岡山大学と北海道大学の共同研究プレスリリースです。


◆須藤雄気教授からのひとこと
 世の中の「ジレンマ」を解決して、よりよい社会の実現を目指しましょう!!岡山と北海道を行き来しながら実験を頑張ってくれた、恒石泰地さん(令和4年・博士前期課程卒)に感謝と拍手です。


◆論文情報
 論 文 名:Development of light-induced disruptive liposomes (LiDL) as a photoswichable carrier for intracellular substance delivery
 邦題名「光応答性細胞内物質送達体としての光誘起崩壊リポソーム(LiDL)の開発」
 掲 載 紙: Chemical Communications
 著  者: Taichi Tsuneishi, Keiichi Kojima, Fumika Kubota, Hideyoshi Harashima, Yuma Yamada, Yuki Sudo
 D O I: https://doi.org/10.1039/D3CC02056H
 U R L: https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2023/cc/d3cc02056h?page=search


◆研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(挑戦的研究(萌芽)・20K21482, 研究代表:須藤雄気)や新学術領域研究(「発動分子科学」・19H05396, 研究代表:須藤雄気)などの支援を受けて実施しました。


◆詳しい研究内容について
 薬物送達のジレンマを解決:光で壊れるリポソームの開発と応用
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230612-2.pdf


◆参 考
・岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)生物物理化学研究室
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/bukka/index.html
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学薬学部
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/
・北海道大学大学院薬学研究院 薬剤分子設計学研究室
 https://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakusetu/


◆参考情報
・【岡山大学】光で狙った細胞を死滅させる新技術の開発 ~副作用のない光がん治療法に向けて~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000521.000072793.html
・【岡山大学】神経抑制に役立つタンパク質の巧みな光応答メカニズムを解明
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000421.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)教授 須藤雄気
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 薬学部1号館 3階
 TEL:
 FAX:
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/bukka/index.html

 北海道大学大学院薬学研究院 教授 山田勇磨
 TEL:
 FAX:

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください