<発表のポイント>
1.光合成で、光エネルギーの転換反応は「チラコイド膜」という膜の上で起こります。
2.その、光合成の足場ともいえるチラコイド膜を維持する分子機構について、今回、VIPP1と呼ばれるタンパク質の超分子構造が日本とドイツの国際共同研究により解明されました。
3.長らく謎とされたチラコイド膜を作る分子の役割が明らかになり、今後、光合成の効率を高めるなど、植物や藻類をバイオ素材とする技術への貢献が期待されます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)資源植物科学研究所・光環境適応研究グループの坂本亘教授と大西紀和非常勤研究員は、ヘルムホルツ研究所、カイザースラウテルン工科大学、などドイツのグループと共同で、光合成の光エネルギー転換反応が起こる「チラコイド膜」を維持するVIPP1と呼ばれるタンパク質分子が作る微細な構造を、世界で初めて明らかにしました。

 光合成は、生命が光からのエネルギー使うことができる唯一の反応で、地球環境や衣食住に欠かせない重要な反応です。この反応は、シアノバクテリアや藻類、植物だけが持つ「チラコイド膜」という袋状の膜の中で起こります。ここが光合成の足場といえますが、この特徴ある膜ができるしくみは、長らく謎とされていました。今回、VIPP1と呼ばれるタンパク質の構造を明らかにし、この膜を維持して光合成を高める作用もあることを突き止めました。生命の源、光合成の理解が進むとともに、バイオ素材の効率的な生産など脱炭素社会への貢献が期待されます。

 この研究成果は2021年6月23日  (アメリカ東部時間)、米国の国際科学誌「セル (Cell )」のArticleとして掲載されました。


◆坂本亘教授からのひとこと
 光合成は、光を利用して水と二酸化炭素を原料に有機物やエネルギーを作る、私たちの生活に欠かせない驚くほど精巧な反応です。また、光合成の研究は、人工光合成やバイオ素材の開発など、脱炭素社会によりSDGsに貢献するテーマです。
 ちなみに、葉っぱが緑に見えるのは、チラコイド膜があるからで、ここから地球上の酸素が作られているんですね。


◆論文情報
 論文名:Structural basis for VIPP1 oligomerization and maintenance of thylakoid membrane integrity
 掲載紙:Cell
 著 者:Tilak Kumar Gupta, Sven Klumpe, Karin Gries, Steffen Heinz, Wojciech Wietrzynski, Norikazu Ohnishi, Justus Niemeyer, Benjamin Spaniol, Miroslava Schaffer, Anna Rast, Matthias Ostermeier, Mike Strauss, Jürgen M. Plitzko, Wolfgang Baumeister, Till Rudack, Wataru Sakamoto, Jörg Nickelsen, Jan M. Schuller, Michael Schroda, Benjamin D. Engel
 DOI:10.1016/j.cell.2021.1.05.011
 https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00628-0#%20


◆詳しいプレスリリースについて
 生命の源、光合成の足場づくり~「足場=チラコイド膜」を守り光合成を高めるしくみを明らかに~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20210624.pdf


◆参 考
・岡山大学資源植物科学研究所(IPSR)
 https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学大学院環境生命科学研究科
 http://www.gels.okayama-u.ac.jp/index.html


◆参考情報
・【岡山大学】光化学系IIの立体構造をクライオ電子顕微鏡で高精度に決定 ~生体内環境に近い状態での分子構造決定に光明~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000072793.html
・【岡山大学】「強すぎる光」に対する藻類の生存戦略を解明! 強光を受けた際の有用藻類ユーグレナの光エネルギー利用機構を明らかに
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000072793.html
・【岡山大学】光捕集複合体フィコビリソームの単粒子構造解析 -藻類の太陽光エネルギーを吸収するタンパク質構造を解明-
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
<本研究に関するお問い合わせ先>
 岡山大学資源植物科学研究所 光環境適応研究グループ 教授 坂本 亘
 〒710-0046 岡山県倉敷市中央2-20-1
 TEL:
 https://www.rib.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学連携・知的財産本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
  ※◎を@に置き換えて下さい
 TEL:
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学メディア「OTD」:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
 岡山大学Image Movie (2020):

 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2021年6月  期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000103.000072793.html

 岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html
 岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html