「天円地方」。天は円く、地は方形であるという古代中国の宇宙観。このたび、これをテーマとした新作による菊地武彦展を開催いたします。天に向かうかと思えば引力に導かれ地を目指す黒い線。そこから湧き出たいくつかの点や色。それらは二極化されたものを一体化させようとする、彼の言葉にならない幾層もの心情が託されたかのようです。
そもそも菊地武彦は現在教鞭をとる多摩美術大学、そして同大学院で油画を学び、今も画壇においては洋画家に位置するのですが、受賞を重ねた20数年前のある日、表現方法に和紙や岩絵の具、墨といった日本画の素材を選びます。やがて日本画のコンクールである山種美術館賞に推挙され話題に。以来その独創的な手法を用いて心象世界を追及しています。現代の絵画表現は多様化しており、絵具や支持体云々で分類されるべきものではないのでしょう。
私事ながら、彼の作品のひとつが自宅の玄関にあります。その魅力を説明するのは難しいのですが、勝手なひとことで言うと「凛とした気持ちにさせてくれる」でしょうか。一本の線に込められた強い想いを感じます。大気の中で大地に立つ自分が、迷うことなく上に向かって突き進んでいる。数秒眺めることでそんなイメージを沸かせる絵です。そしてそこには数千とも思える色が潜み、単純に美しいのです。
「線の気韻」から「土の記憶」へ。彼が長年追い求めてきたテーマですが、今回の個展は一貫して生命性を込めている線をもって、土=大地と天空の交わりを描いた作品群です。「天円地方」。菊地武彦の美学、そして彼の今立つ画境が今ここに見えてくるでしょう。
そもそも菊地武彦は現在教鞭をとる多摩美術大学、そして同大学院で油画を学び、今も画壇においては洋画家に位置するのですが、受賞を重ねた20数年前のある日、表現方法に和紙や岩絵の具、墨といった日本画の素材を選びます。やがて日本画のコンクールである山種美術館賞に推挙され話題に。以来その独創的な手法を用いて心象世界を追及しています。現代の絵画表現は多様化しており、絵具や支持体云々で分類されるべきものではないのでしょう。
私事ながら、彼の作品のひとつが自宅の玄関にあります。その魅力を説明するのは難しいのですが、勝手なひとことで言うと「凛とした気持ちにさせてくれる」でしょうか。一本の線に込められた強い想いを感じます。大気の中で大地に立つ自分が、迷うことなく上に向かって突き進んでいる。数秒眺めることでそんなイメージを沸かせる絵です。そしてそこには数千とも思える色が潜み、単純に美しいのです。
「線の気韻」から「土の記憶」へ。彼が長年追い求めてきたテーマですが、今回の個展は一貫して生命性を込めている線をもって、土=大地と天空の交わりを描いた作品群です。「天円地方」。菊地武彦の美学、そして彼の今立つ画境が今ここに見えてくるでしょう。