「スマホのながら歩きで危険を感じた」5割弱、スマホ依存層では5割半

ウェアラブル端末で使いたい機能
「地図・ナビアプリ」42.8%、女性は「レシピ・料理ナビ」に注目

ウェアラブル端末で実現して欲しい機能
「命の危険で救急通報」、「危険時に防犯ブザー」
「健康状態の自動記録」、「起きやすいときに目覚まし」、「スマホの置き忘れ防止」

メガネ型端末でプレイしたいゲームタイトル
男性は「バイオ」「DQ」「FF」、女性は「マリオ」「マリカー」「ぶつ森」

ウェアラブル端末、スマホユーザーが欲しいのは「メガネ型」より「腕時計型」
「スカウターを実用化して欲しい」ドラゴンボール世代の30代男性では6割弱

ウェアラブル端末は「プライバシーが心配」7割弱
スマホユーザーの6割強が「ウェアラブル端末は普及に5年以上掛かる」と予想



 東京工芸大学(所在地:東京都中野区・神奈川県厚木市/学長:若尾 真一郎)は、2013年5月17日  ~22日の6日間、20歳以上のスマートフォン利用者を対象に、「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」をモバイルリサーチ(携帯電話によるインターネットリサーチ)で実施、1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力会社:ネットエイジア株式会社)

 東京工芸大学工学部メディア画像学科(映像メディアとメディア技術を専門とする学科)では、ウェアラブル(身につけられる・装着型)デバイスへの活用が期待される、有機ELディスプレイ(紙のように軽く、折り曲げられるディスプレイ)の研究などを行なっています。今回の調査では、昨今注目を集めるウェアラブル型のスマートデバイスが“ポストスマートフォン”としてポータブル(携帯型)デバイスに置き代わって普及することがあるのか、その可能性を探りました。


※リサーチ結果は、下記URLでも公開しております。
http://www.t-kougei.ac.jp/guide/pr


「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」 調査結果

== ウェアラブル端末の潜在ニーズについて ==

◆ スマホを使っていて不満を感じた経験
「スマホの取り出し面倒に感じた」経験7 割半、「通知見逃し」経験9 割
「スマホのながら歩きで危険を感じた」5 割弱、スマホ依存層では5 割半
「スマホのロック解除が面倒」6 割、「スマホ置き忘れ」経験6 割
 まず始めに、スマートフォン(以下スマホ)の不満に関する質問を行いました。“ポータブル”端末のスマホに対する不満を明らかにすることで、“ウェアラブル”端末に対する潜在ニーズを探ります。
 20歳以上のスマホ利用者(1,000名)に対し、スマホを使っていて不満を感じた経験について聞いたところ、『取り出して操作するのを面倒に感じた』経験が75.9%(「よく経験する」+「たまに経験する」、以下同様)となりました。ポータブル端末を操作する前に必要な、“端末を取り出す”ステップを煩わしく感じる方が7割半いることがわかりました。
 また、外出時にはスマホを「ポケットやかばんの中にしまっている」方がほとんど(93.9%)で、《着信やメール・スケジュールなどの通知に気がつかなかった》経験は9割(90.2%)となりました。手元ですぐに通知が確認可能なウェアラブルな情報端末、例えば、“腕時計・ブレスレット型”端末に対する潜在的なニーズが窺えます。
 また、《画面を見ながら歩いていて危ない思いをした》経験は47.4%で、スマホが『ないと落ち着かない』と回答したスマホ依存層(484名)はその割合が高く(依存層54.4%>非依存層41.1%)なりました。視線を前に向けたまま利用できる、透過型ディスプレイを採用した“メガネ・ゴーグル型”端末は、スマホ依存層から関心が寄せられそうです。
 そのほか、《ロック解除を面倒に感じた》経験(60.7%)や《端末をどこに置いたかわからない》経験(61.2%)は6割となり、これらの経験はスマホを『使いこなせていない』と回答したスマホ非活用層(175名)でより頻度が高く(「よく経験する」の割合が高く)なっています。常に身につけていられるウェアラブル端末を“情報端末の鍵”とするような機能、例えば、スマホなどの情報端末に近づくとロックが解除される、離れると置き忘れの通知がされる、といった機能を実用化できれば、機械の扱いに不慣れな層にも受け入れられそうです。

== ウェアラブル端末に求められる機能について ==

◆ ウェアラブル端末で使いたい機能
「地図・ナビアプリ」42.8%、「インターネット検索」38.4%、女性は「レシピ・料理ナビ」に注目
 消費者はどんなメリットを感じられれば、ポータブル端末からウェアラブル端末への乗り替えを望むようになるのでしょうか。スマホ利用者が端末のウェアラブル化で便利になると思う機能を聞き、その結果からウェアラブル端末が普及するために必要な要素の手がかりを探ります。
 全回答者(1,000名)に対し、スマホで出来る機能を【ハンズフリー(端末を手に持たず)】で、または【アイズフリー(画面を注視せず)】で使えるようになったら、今よりも便利になると思う機能を聞いたところ、最も多かったのは「音声通話」(59.2%)で、次いで、「メール・メッセージ」(45.1%)、「地図・ナビアプリ」(42.8%)、「インターネット検索」(38.4%)と続きました。携帯電話の主な機能である通話・メッセージ機能と、“情報の表示”に関連する機能が上位回答となりました。“情報の表示”に関連する機能については、ナビアプリなどの“主目的をサポートする”機能が多く選ばれているようで、女性は「レシピ・料理ナビ(18.4%)の割合が男性(8.4%)よりも高くなるなどの特徴も見られました。
 一方、下位回答には「ネットショッピング」(9.0%)や「電子書籍の閲覧」(5.8%)といった、買い物や読書などの“主目的を達成する”機能が散見されました。スマホよりもウェアラブル端末が選ばれるようになるには、“ながら利用”のシーンが想定される機能を、端末操作に没頭しなくても利用できるようにする、といった要素が不可欠なのかもしれません。

◆ ウェアラブル端末で実現して欲しい機能
「命の危険で救急通報」39.1%、「危険時に防犯ブザー」37.3%
「健康状態の自動記録」37.6%、「起きやすいときに目覚まし」37.5%、「スマホの置き忘れ防止」36.0%
 また、ウェアラブル端末をセンサーとして利用することで、心体の状態や位置情報などをトリガーとして様々な便利な機能を自動実行することも技術的には可能となります。そこで、スマホに【体の変化や行動を読み取って】【自動で】使える機能を追加できるとしたらどんな機能が欲しいか具体例を挙げて聞いたところ、「命の危険が迫ったら救急に通報」(39.1%)や「危険を感じたら防犯ブザーを鳴らす」(37.3%)といった緊急時に役立つ機能のほか、「健康状態を自動記録」(37.6%)、「起きやすい睡眠状態のときに起こしてくれる目覚まし」(37.5%)などの健康や生活を管理する機能、「スマホから離れたら通知」(36.0%)などのセキュリティ機能が欲しいとする回答が3割半を超えました。ウェアラブル端末はアンビエント社会(情報システムやIT機器が自律的に利用者に役に立つ情報や機能を提供する社会)を担う端末としての期待も高いようです。

◆ メガネ型端末でプレイしたいゲームタイトル
男性は「バイオ」「DQ」「FF」、女性は「マリオ」「マリカー」「ぶつ森」
 透過型のディスプレイを採用したメガネ・ゴーグル型のウェアラブル端末では、現実の世界に情報を重ねて表示するAR(拡張現実)技術を利用したソフトウェアが今より身近になると予想されます。そこで、AR技術の導入に積極的なゲーム分野を例に挙げ、メガネ・ゴーグル型のウェアラブル端末でプレイしてみたいゲームタイトルを聞くことで、“ウェアラブル端末でどんな新体験ができると魅力的か”を探る手がかりとしました。
 メガネ・ゴーグル型端末の所有意向がある方(274名)に対し、メガネ・ゴーグル型端末でプレイしてみたいゲームタイトルを聞いたところ、「スーパーマリオ」(31.4%)、「マリオカート」(31.0%)、「バイオハザード」(30.7%)、「ドラゴンクエスト」(30.7%)といった、世代を越えて愛されている定番ゲームタイトルが上位に並びました。これらのタイトルはメガネ・ゴーグル型の端末でAR技術を使った新感覚のゲームとなっても、多数のユーザーを惹きつける集客力がありそうです。
 また、男女別のトップ3は傾向が異なり、男性は同率1位「バイオハザード」と「ドラゴンクエスト」(37.1%)、3位「ファイナルファンタジー」(30.9%)、女性は1位「スーパーマリオ」(35.0%)、2位「マリオカート」(32.5%)、3位「どうぶつの森」(26.3%)となりました。男性はサバイバルホラーやRPGなどの重厚な世界感・物語のあるタイトル、女性はアクション・シュミレーションなどのジャンルで、ファンシーなキャラクターが登場するタイトルが上位となりました。今よりもゲーム世界に入り込んだような“没入感”を持ってプレイしたい、と考えられているタイトルが上位に選ばれたのかもしれません。

== ウェアラブル端末の所有意向について ==

◆ 消費カロリーなどを自動で記録する「活動量計欲しい」男性は3 割強、女性は4 割半
 スマホユーザーは現時点でどの程度、ウェアラブル端末に興味があるのでしょうか。
 全回答者(1,000名)に対し、現在すでに商品化されている製品を例に挙げ、それぞれの製品群について、所有意向を聞いたところ、スマホなどの情報端末と連動して利用できるガジェットは3~4割程度の所有意向(「非常に欲しい」+「やや欲しい」、以下同様)があり、《活動量計》は39.4%、《スマートウォッチ》は39.0%、《運動データを自動収集する靴》は32.9%となりました。また《ヘッドマウントディスプレイ》は男性の所有意向が女性よりも高く(男性22.4%>女性6.2%)なり、女性は男性より《活動量計》の所有意向が高く(女性45.0%>男性33.8%)なりました。

◆ ウェアラブル端末、スマホユーザーが欲しいのは「メガネ型」より「腕時計型」
◆ 「スカウターを実用化して欲しい」ドラゴンボール世代の30 代男性では6 割弱
 それでは、今後、スマホでできるような機能が全て実現できる、ウェアラブル型のスマートデバイスが発売された場合、どのような形状の端末の需要が高いのでしょうか。
 ウェアラブル端末の形状毎に所有意向を聞いたところ、《腕時計・ブレスレット型》が59.8%と最も高くなり、次いで《メガネ・ゴーグル型》27.4%、《指輪型》24.2%、《衣服型》10.8%、《キャップ(帽子)型》8.8%、と続きました。ポータブル端末に近い感覚で扱えそうなイメージがあるためか、手に近い部分に装着する端末が他の形状よりも所有意向が高くなったほか、近未来を想像させる《メガネ・ゴーグル型》も一定の支持を得ている様子が窺えました。
 さらに、メガネ・ゴーグル型端末について、ドラゴンボールの《スカウター》と電脳コイルの《電脳メガネ》を例に挙げ、これらの端末の実用化を希望するか聞いたところ、実用化を期待する割合(【実用化して欲しい】に対する回答「非常にそう思う」+「まあそう思う」)は《スカウター》で34.5%、《電脳メガネ》では20.6%となりました。《スカウター》については、20代男性(50.3%)や30代男性(57.4%)の過半数が実用化を希望しており、いわゆるドラゴンボール世代にあたる男性で実用化を期待する割合が高くなっています。腕時計・ブレスレット型の端末よりも所有意向の低かったメガネ・ゴーグル型端末ですが、製品のイメージが湧きやすい具体例を挙げると期待感も低くないことから、実際の販売時にどれだけ製品の利用シーンをイメージしやすい販売手法を取るかが、製品を受け入れられるために重要となるかもしれません。

◆ 実現したら欲しい 「フレキシブルスマホ」64.6%、「情報を表示できる窓」71.3%
 今後、さらに自由な形状のウェアラブル端末を実現するための技術として、有機ELディスプレイなどの透過型・フレキシブル(折り曲げられる)ディスプレイの分野に注目が集まると考えられます。そこで、透過型・フレキシブルディスプレイを利用した製品の所有意向について質問を行いました。
 全回答者(1,000名)に対し、様々な企業のフューチャービジョン(近未来像)として登場する製品の所有意向を聞いたところ、フレキシブルディスプレイを採用した《形状を変更できるスマホ》の所有意向は64.6%、透過型ディスプレイを採用した《必要なときにだけ、情報を表示できるガラス(窓)》は71.3%、《必要なときにだけ、情報を表示できる鏡》は66.0%となりました。これらは先に登場した腕時計・ブレスレット型端末やメガネ・ゴーグル型端末よりも所有意向が高く、有機ELディスプレイなど、より自由度の高いウェアラブル端末を開発するための技術に対して、今後、期待感が高まっていくであろうことが予想できました。

== ウェアラブル端末の今後について ==

◆ ウェアラブル端末は「災害時に役立つ」7 割、「プライバシーが心配」7 割弱
◆ スマホユーザーの6 割強が「ウェアラブル端末は普及に 5 年以上掛かる」と予想
 全回答者(1,000名)に対し、ウェアラブル端末に対する意識について聞いたところ、《災害時に役立つと思う》の項目では『そう思う』(「非常にそう思う」+「まあそう思う」)が69.8%、《実用化されたらプライバシーの問題が心配》では67.5%、《普及するには5年以上掛かりそう》では62.7%となりました。ポータブル端末とは異なり、肌身離さず携行することができるので、非常時などにも便利だと有用性を認める一方、写真や動画の撮影、インターネット上への公開が可能な端末を常時携行できるようになることに対する不安感が浮き彫りになりました。そういった不安感を感じることもあってか、現状ではウェアラブル端末の普及に時間が掛かりそうだと予想する方が多数派であるようです。

※リサーチ結果は、下記URLでも公開しております。
http://www.t-kougei.ac.jp/guide/pr


本学教員コメント 「ウェアラブル・コンピュータに関する調査」について

 東京工芸大学工学部メディア画像学科教授の内田孝幸(専門分野:ディスプレイ/スマートウィンドウ)は、今回の調査結果について次のように述べています。

 現在普及が進んでいるスマホの次なるステージを示唆する、多くの有意な情報がこの調査には含まれています。20~30 代ではスマホの利用は多く、特にデータ通信の比重が多くなっていることが分かります。現在、公共交通に乗れば、世代によらず多くの人々がこれらの端末を眺め、使っている事からも、この普及の速さを感じられるかと思います。
 この調査では、今後、社会が目指すユビキタス情報社会(いつでも、どこでも、誰にでも、欲しい情報が手に入る環境)やアンビエント社会(意図せずともユビキタスな状態が構築されている環境)に向けて、まず、アプローチすべき、潜在的ニーズを汲みとることが出来ます。・スマホの取り出しの手間の軽減、・ながら使用の危険性の回避、・ロックやアンロックの手間(情報の安全性と利便性の相反事象)の軽減などが、すぐにでも改善すべき事項として挙げられています。
 これらを解決する方法として、紙のように薄くて軽いフレキシブルスマホや必要な時だけ情報を表示できるガラス(窓)への期待は7 割程度あり、その高さが窺え、関連研究に携わる者として大きなモチベーションや再考のきっかけを与えてくれる結果となりました。個人情報の観点を配慮に入れつつ、ウェアラブル・コンピュータを支える技術の発展ならびに未来の形を具現化する新しいカタチが、もうそこまで来ているようです。

◆調査概要◆
◆調査タイトル :ウェアラブル・コンピュータに関する調査
◆調査対象 :ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする
 20歳以上のスマートフォン利用者
 (20代 男女各167名、30代 男女各167名、40歳以上 男女各166名にて割付)
◆調査期間 :2013年5月17日  ~22日
◆調査方法 :インターネット調査(モバイルリサーチ)
◆調査地域 :全国
◆サンプル数 :1,000サンプル(有効回答から1,000サンプルを抽出)
◆実施機関 :ネットエイジア株式会社
調査協力会社 :ネットエイジア株式会社 担当:安高(アタカ)

■■報道関係の皆様へ■■
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担当 : 林、栗原
電話 : / FAX   e -ma i l :


■■東京工芸大学 概要■■
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 現在は、「工学×芸術=∞(無限の可能性)」という考え方のもとで工学部と芸術学部の様々な連携教育及び活動を進めており、創造性とオリジナリティーあふれる人材を育成しています。

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