2023/09/16 09:12
教育・研究エンジニア
<発表のポイント>
・刺激を受けると動かなくなる「死んだふり行動」は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、ダニ類、昆虫類など様々な分類群の動物で見られる行動です。ファーブルとダーウィンが昆虫の死んだふり行動に興味を持って以来、死んだふりを引き起こす刺激については、多くの研究があり、その適応的な意義についての研究も進みました。しかし、「死んだふりからいつ目覚めるべきか?」という視点には世界の誰も注目していませんでした。
・もしいつまでも「死んだふり」をし続けると、徘徊性の捕食者に襲われる危険、嗅覚の発達した捕食者に食べられる危険が増し、さらに異性や餌にめぐり合う機会も減るため、死んだふりをずっと続けているわけにはいかず、覚醒する必要があります。
・今回、死んだふりのモデル昆虫であるコクヌストモドキにおいて、集合フェロモンの存在が死んだふりから覚醒する刺激のひとつであることを世界に先駆けて示しました。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院環境生命自然科学研究科の石川望都也大学院生(博士前期課程1年)と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の松村健太郎研究助教、宮竹貴久教授の研究グループは、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)という貯穀害虫を用いて死んだふり行動から覚醒する刺激について調べました。その結果、死んだふりをしている成虫を、同種の集合フェロモンの匂いにさらすことで死んだふりから覚醒するまでの時間が短くなることを新たに発見しました。
同研究グループは、2019年にも死んだふりをしている本種の成虫を置いた地面(シャーレ)を振動させると、ある強さの振動で死んだふりを中断して、歩き出すことを世界に先駆けて発見しており(Miyatake et al. 2019)、継続的に「死んだふり」行動を研究しています。
この研究成果は2023年9月14日 午前0時(日本時間)、Springerの日本動物行動学会誌「Journal of Ethology」にオンライン掲載されました。
◆宮竹貴久教授からのひとこと
多くの動物や昆虫で、外部から刺激を与えると動かなくなる「死んだふり」行動が見られます。実は動物界は死んだふり行動で溢れていると言って過言ではないのですが、ダーウィンとファーブルが興味を持って以来、詳しく調べられてきませんでした。研究の題材は案外、身近なところにも転がっているものだな、と思います。
◆論文情報
論文名:Aggregation pheromone interrupts death feigning in the red flour beetle Tribolium castaneum
邦題名「集合フェロモンはコクヌストモドキの死んだふり行動を中断させる」
掲載誌:Journal of Ethology
著 者:Motoya Ishikawa, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
D O I:10.1007/s13-2
U R L:https://doi.org/10.1007/s10164-023-00793-2
◆先行研究(Miyatake et al. 2019)
論文名:Arousal from tonic immobility by vibration stimulus.
邦題名「振動刺激による死んだふりからの覚醒」
掲載誌:Behavior Genetics (国際行動遺伝学会誌 Springer)
著 者: Miyatake T, Matsumura K, Kitayama R, Otsuki R, Yuhao J, Fujisawa R, Nagaya N
D O I:10.1007/s12-x
U R L:https://link.springer.com/article/10.1007/s10519-019-09962-x
◆研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(21H02568)の支援を受けて実施しました。
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(宮竹貴久教授)
https://sites.google.com/view/miyatake/home
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(松村健太郎研究助教)
https://sites.google.com/view/matsuken817/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
◆参考情報
・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html
・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html
・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html
・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html
・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html
・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html
・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html
・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000072793.html
・虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000721.000072793.html
・死んだふりに見られた緯度クライン ~北の虫は死んだふりをよく行う~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001335.000072793.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農) 教授 宮竹貴久
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:
FAX:
<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学:岡山大学にご期待ください
・刺激を受けると動かなくなる「死んだふり行動」は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、ダニ類、昆虫類など様々な分類群の動物で見られる行動です。ファーブルとダーウィンが昆虫の死んだふり行動に興味を持って以来、死んだふりを引き起こす刺激については、多くの研究があり、その適応的な意義についての研究も進みました。しかし、「死んだふりからいつ目覚めるべきか?」という視点には世界の誰も注目していませんでした。
・もしいつまでも「死んだふり」をし続けると、徘徊性の捕食者に襲われる危険、嗅覚の発達した捕食者に食べられる危険が増し、さらに異性や餌にめぐり合う機会も減るため、死んだふりをずっと続けているわけにはいかず、覚醒する必要があります。
・今回、死んだふりのモデル昆虫であるコクヌストモドキにおいて、集合フェロモンの存在が死んだふりから覚醒する刺激のひとつであることを世界に先駆けて示しました。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院環境生命自然科学研究科の石川望都也大学院生(博士前期課程1年)と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の松村健太郎研究助教、宮竹貴久教授の研究グループは、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)という貯穀害虫を用いて死んだふり行動から覚醒する刺激について調べました。その結果、死んだふりをしている成虫を、同種の集合フェロモンの匂いにさらすことで死んだふりから覚醒するまでの時間が短くなることを新たに発見しました。
同研究グループは、2019年にも死んだふりをしている本種の成虫を置いた地面(シャーレ)を振動させると、ある強さの振動で死んだふりを中断して、歩き出すことを世界に先駆けて発見しており(Miyatake et al. 2019)、継続的に「死んだふり」行動を研究しています。
この研究成果は2023年9月14日 午前0時(日本時間)、Springerの日本動物行動学会誌「Journal of Ethology」にオンライン掲載されました。
◆宮竹貴久教授からのひとこと
多くの動物や昆虫で、外部から刺激を与えると動かなくなる「死んだふり」行動が見られます。実は動物界は死んだふり行動で溢れていると言って過言ではないのですが、ダーウィンとファーブルが興味を持って以来、詳しく調べられてきませんでした。研究の題材は案外、身近なところにも転がっているものだな、と思います。
◆論文情報
論文名:Aggregation pheromone interrupts death feigning in the red flour beetle Tribolium castaneum
邦題名「集合フェロモンはコクヌストモドキの死んだふり行動を中断させる」
掲載誌:Journal of Ethology
著 者:Motoya Ishikawa, Kentarou Matsumura, Takahisa Miyatake
D O I:10.1007/s13-2
U R L:https://doi.org/10.1007/s10164-023-00793-2
◆先行研究(Miyatake et al. 2019)
論文名:Arousal from tonic immobility by vibration stimulus.
邦題名「振動刺激による死んだふりからの覚醒」
掲載誌:Behavior Genetics (国際行動遺伝学会誌 Springer)
著 者: Miyatake T, Matsumura K, Kitayama R, Otsuki R, Yuhao J, Fujisawa R, Nagaya N
D O I:10.1007/s12-x
U R L:https://link.springer.com/article/10.1007/s10519-019-09962-x
◆研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(21H02568)の支援を受けて実施しました。
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(宮竹貴久教授)
https://sites.google.com/view/miyatake/home
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(松村健太郎研究助教)
https://sites.google.com/view/matsuken817/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0?authuser=0
◆参考情報
・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html
・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html
・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html
・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html
・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html
・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html
・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html
・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000072793.html
・虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000721.000072793.html
・死んだふりに見られた緯度クライン ~北の虫は死んだふりをよく行う~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001335.000072793.html
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農) 教授 宮竹貴久
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:
FAX:
<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学:岡山大学にご期待ください