介護職員や介護施設にとって、毎回の介護保険制度の改正に素早く対応することは重要な課題になっています。そして、2024年の介護保険制度の改正も迫ってきており、その動向を注目している人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな2024年介護保険制度改正で新たに創設される可能性が高いと言われている新たな複合型サービスについて解説していきます。


<2024年に創設される可能性が高い「訪問と通所を組み合わせた新しい複合型サービス」とは>

厚生労働省は次回の介護保険制度の改正に向けて、第101回介護保険部会で以下のような提言をしています「単独・独居や高齢者のみの世帯の増加、介護ニーズが急増する大都市部の状況等を踏まえ、柔軟なサービス提供によるケアの質の向上や家族負担の軽減に資するよう、地域の実情に合わせて既存資源等を活用した複合的な在宅サービスの整備を進めていくことが重要でないか」

このような提言が行われた背景として「2040年問題」があります。2040年問題とは少子化による急速な人口減少と高齢者人口の増加により、2040年に日本がさまざまな問題に直面することです。2040年は第二次ベビーブームと言われた1971年-1974年生まれの世代である、団塊ジュニア世代が65歳以上、つまり高齢者になる年なのです。

少なくなった若年者世代で人数の多い団塊ジュニア世代を支える必要があることから、若い世代への負担が大きくなることが懸念されているのです。またこの団塊ジュニア世代は就職氷河期を生きた世代であるため、貯蓄額が少ない人も多く、2040年の若い世代の負担が増加するという予想もあるのです。


<施設不足・マンパワー不足>

このように近い将来に若者が高齢者を支えるという原稿の社会保障制度の存続が危ぶまれるなかで地域の実情に合わせて細やかな動きをできる施設が求められます。またマンパワーが足りなくなってくる中で既存の資源も有効活用も必要です。

現在通所介護のみをやっているような事業所が訪問サービスも提供できるようになれば、通所介護が難しくなった時にスムーズに訪問サービスを提供できるため、時間や人手の節約につながることになります。

今後この新たなサービス類型について、報酬や加算、施設の基準など詳しい内容が決定されていくことになります。参入を考えている事業所は新しい情報に注視して準備を進めていくことが必要になります。


<「訪問と通所を組み合わせた新しい複合型サービス」参入予定の事業所は多い?>

厚生労働省は2022年の11月に、三菱総合研究所に委託して全国4686の事業所に新サービス参入についての意向の調査を行いました。

事業者がこの新サービスにはどのようなメリットが期待できるかについてアンケートしたところ「本人の状況を踏まえた細やかな支援ができる」と回答した事業所が最も多くなりました。一方でデメリットとして挙げられたこととしては「急なキャンセル等のサービス変更があった場合の事業所への連絡調整が難しい・煩雑」というものが多くなっていました。

やはりシームレスなサービスの移行や臨機応変な対応というところにメリットを感じる事業所が多いようです。デメリットについては新規のサービスを導入する際の手続きの煩雑さを懸念する声が多いのはやはり仕方がないと言えるでしょう。


<新サービスに参入を前向きに検討>


肝心の参入意向について見ていくと、「参入を検討するつもりはない」と答えた事業所の割合が訪問介護の事業所で24.5%、通所介護の事業所で14.3%でした。つまりそれ以外の事業所では新サービスに参入を前向きに検討しているということになります。

新たなサービスを行うにあたっての課題をどう考えているか、について調査の結果を見てみると、「人材確保が難しい」と答えた事業所が多くなっていました。そのほか「人材教育・管理が難しい」「業務時間管理・勤怠管理が難しい」「適切な管理者がいない」などといった項目が多くなっており、やはり参入を検討している事業所でも人材の確保や育成・管理について課題が多いと感じるようです。

人材確保がしやすくなるように、訪問サービスを実施する人の資格要件を緩和したり、施設の運営基準の設定を適切に考えるなどの施策が必要になると考えられており、次回の介護制度の改訂でどのような発表が行われるか注目していく必要があるでしょう。


<まとめ>

今回は2024年の介護保険制度改定で導入される可能性が高まってきている「訪問と通所を組み合わせた新たな複合型サービス」について解説をしていきました。今後多くの事業所が参入すると予測される新たなカテゴリーの介護サービスとなります。参入を考えている事業所は今後の動向について最新の動向のチェックをしっかりとしていく必要があります。

また現在のところは参入する意向のない事業省であっても、地域を取り巻く介護サービスのあり方にダイナミックな変化をもたらす施策となりますので、今後の動向をしっかりと見守っていきましょう。


※この記事は2023年6月30日  にホームページに掲載したコラムです

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