2023/05/14 05:09
教育・研究エンジニア
<発表のポイント>
・悪性胸膜中皮腫は、吸引されたアスベスト繊維によって引き起こされる胸膜の癌です。アスベスト繊維は、肺組織に固定されると、フェリチンと呼ばれる含鉄タンパク質を表面に蓄積し、アスベスト小体へと成長します。しかし、アスベスト小体が癌を引き起こす理由は十分に理解されていません。
・これまでの研究により、アスベスト小体の外的特徴が記述されていました。しかし、アスベスト小体の直径は数ミクロンと小さく、その内部構造は明らかにされていませんでした。
・本研究では、悪性胸膜中皮腫患者(喫煙者と非喫煙者)の肺組織から採取されたアスベスト小体を厚さ約 0.1ミクロンの輪切りにして、透過型電子顕微鏡を用いて観察しました。
・喫煙者と非喫煙者のアスベスト小体を比較したところ、形態および化学組成に違いが観察されました。喫煙者のアスベスト小体は非喫煙者のそれに比べ、密度が高く、小さく、鉄に富んでいました。常習的な喫煙により継続的に鉄が肺に供給されるからだと考えられます。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の岡山大学惑星物質研究所(鳥取県東伯郡三朝町)の中村栄三特任教授らの研究グループは、悪性胸膜中皮腫患者(喫煙者と非喫煙者)の肺全摘手術後の肺組織からアスベスト小体を分離し、地球化学的手法を応用し、これらを比較観察しました。
喫煙者と非喫煙者のアスベスト小体について、形態および化学組成に差異が認められました。喫煙者のアスベスト小体は、非喫煙者に比べて小さく、密度が高く、鉄に富んでいました。分析されたすべてのアスベスト小体を構成する含鉄タンパク質中の鉄は水酸化鉄の中でも結晶性の極めて低いフェリハイドライトから構成されることが明らかになりました。
このことは、フェリハイドライトが含鉄タンパク質の殻に包まれたままであり、遊離鉄イオンの発生を抑えていると考えられます。従って、アスベスト小体中の鉄分が触媒となり活性酸素を生成している可能性は低く、活性酸素が悪性胸膜中皮腫の原因でないことを示唆します。
本情報は、2023年5月12日 に岡山大学ホームページで公開されました。
◆中村栄三特任教授からのひとこと
小惑星リュウグウの研究で用いた地球化学的手法は人体に関係する研究にそっくりそのまま応用できます。宇宙を支配する摂理と同じ摂理がヒト内部の物質の挙動を決めるのです。引き続き、惑星物質について分け隔たりなく、物質の進化を理解していこうと思います。
◆論文情報
論文名:An investigation of the internal morphology of asbestos ferruginous bodies: constraining their role in the onset of malignant mesothelioma
邦題名:「アスベスト曝露による癌発症機序の謎:喫煙者と非喫煙者のアスベスト繊維を包む含鉄タンパク質の地球化学的特徴から明らかになったこと」
掲載誌:Particle and Fibre Toxicology
著 者:Maya-Liliana Avramescu, Christian Potiszil, Tak Kunihiro, Kazunori Okabe, and Eizo Nakamura
D O I:10.1186/s12-0
U R L:https://doi.org/10.1186/s12989-023-00522-0
◆詳しいプレスリリースについて
アスベスト曝露による癌発症機序の謎:喫煙者と非喫煙者のアスベスト繊維を包む含鉄タンパク質の地球化学的特徴から明らかになったこと
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230512-3.pdf
◆参 考
・岡山大学惑星物質研究所(IPM)
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
・岡山大学惑星物質研究所 The Pheasant Memorial Laboratory(PML)
https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/home.php
◆参考情報
・【岡山大学】小惑星リュウグウがかつて彗星であった可能性を理論的に指摘 〜小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星物質の起源解明へ〜
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000573.000072793.html
・【岡山大学】小惑星リュウグウに記録されたアミノ酸生成の痕跡 ~初期太陽系における水-有機物反応のスナップショット~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001338.000072793.html
◆岡山大学惑星物質研究所紹介
YouTube 4:53
◆本件問い合わせ先
岡山大学惑星物質研究所
岡山大学自然生命科学研究支援センター 特任教授 中村栄三
(勤務地:岡山大学惑星物質研究所〔〒682-0193 鳥取県東伯郡三朝町山田827〕)
TEL:
FAX:
E-mail:eizonak ◎misasa.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/home.php
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):
岡山大学Image Movie (YouTube):
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2023年5月 期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001398.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください
・悪性胸膜中皮腫は、吸引されたアスベスト繊維によって引き起こされる胸膜の癌です。アスベスト繊維は、肺組織に固定されると、フェリチンと呼ばれる含鉄タンパク質を表面に蓄積し、アスベスト小体へと成長します。しかし、アスベスト小体が癌を引き起こす理由は十分に理解されていません。
・これまでの研究により、アスベスト小体の外的特徴が記述されていました。しかし、アスベスト小体の直径は数ミクロンと小さく、その内部構造は明らかにされていませんでした。
・本研究では、悪性胸膜中皮腫患者(喫煙者と非喫煙者)の肺組織から採取されたアスベスト小体を厚さ約 0.1ミクロンの輪切りにして、透過型電子顕微鏡を用いて観察しました。
・喫煙者と非喫煙者のアスベスト小体を比較したところ、形態および化学組成に違いが観察されました。喫煙者のアスベスト小体は非喫煙者のそれに比べ、密度が高く、小さく、鉄に富んでいました。常習的な喫煙により継続的に鉄が肺に供給されるからだと考えられます。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の岡山大学惑星物質研究所(鳥取県東伯郡三朝町)の中村栄三特任教授らの研究グループは、悪性胸膜中皮腫患者(喫煙者と非喫煙者)の肺全摘手術後の肺組織からアスベスト小体を分離し、地球化学的手法を応用し、これらを比較観察しました。
喫煙者と非喫煙者のアスベスト小体について、形態および化学組成に差異が認められました。喫煙者のアスベスト小体は、非喫煙者に比べて小さく、密度が高く、鉄に富んでいました。分析されたすべてのアスベスト小体を構成する含鉄タンパク質中の鉄は水酸化鉄の中でも結晶性の極めて低いフェリハイドライトから構成されることが明らかになりました。
このことは、フェリハイドライトが含鉄タンパク質の殻に包まれたままであり、遊離鉄イオンの発生を抑えていると考えられます。従って、アスベスト小体中の鉄分が触媒となり活性酸素を生成している可能性は低く、活性酸素が悪性胸膜中皮腫の原因でないことを示唆します。
本情報は、2023年5月12日 に岡山大学ホームページで公開されました。
◆中村栄三特任教授からのひとこと
小惑星リュウグウの研究で用いた地球化学的手法は人体に関係する研究にそっくりそのまま応用できます。宇宙を支配する摂理と同じ摂理がヒト内部の物質の挙動を決めるのです。引き続き、惑星物質について分け隔たりなく、物質の進化を理解していこうと思います。
◆論文情報
論文名:An investigation of the internal morphology of asbestos ferruginous bodies: constraining their role in the onset of malignant mesothelioma
邦題名:「アスベスト曝露による癌発症機序の謎:喫煙者と非喫煙者のアスベスト繊維を包む含鉄タンパク質の地球化学的特徴から明らかになったこと」
掲載誌:Particle and Fibre Toxicology
著 者:Maya-Liliana Avramescu, Christian Potiszil, Tak Kunihiro, Kazunori Okabe, and Eizo Nakamura
D O I:10.1186/s12-0
U R L:https://doi.org/10.1186/s12989-023-00522-0
◆詳しいプレスリリースについて
アスベスト曝露による癌発症機序の謎:喫煙者と非喫煙者のアスベスト繊維を包む含鉄タンパク質の地球化学的特徴から明らかになったこと
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230512-3.pdf
◆参 考
・岡山大学惑星物質研究所(IPM)
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
・岡山大学惑星物質研究所 The Pheasant Memorial Laboratory(PML)
https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/home.php
◆参考情報
・【岡山大学】小惑星リュウグウがかつて彗星であった可能性を理論的に指摘 〜小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星物質の起源解明へ〜
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000573.000072793.html
・【岡山大学】小惑星リュウグウに記録されたアミノ酸生成の痕跡 ~初期太陽系における水-有機物反応のスナップショット~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001338.000072793.html
◆岡山大学惑星物質研究所紹介
YouTube 4:53
◆本件問い合わせ先
岡山大学惑星物質研究所
岡山大学自然生命科学研究支援センター 特任教授 中村栄三
(勤務地:岡山大学惑星物質研究所〔〒682-0193 鳥取県東伯郡三朝町山田827〕)
TEL:
FAX:
E-mail:eizonak ◎misasa.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/home.php
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):
岡山大学Image Movie (YouTube):
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2023年5月 期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001398.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学である岡山大学にご期待ください