岡山大学と理化学研究所、東北大学、神戸大学、東京都立大学の共同研究成果プレスリリースです!


<発表のポイント>
・クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析により、酸素発生型光合成を行うシアノバクテリアAnabaena sp. PCC 7120(以下、アナベナ)の光化学系I(PSI)と集光性色素タンパク質IsiAから構成されるPSI-IsiA超複合体の立体構造を決定しました。
・アナベナPSI-IsiAはPSI単量体に6個のIsiAが結合しており、複合体の構成成分がこれまで報告されている他のシアノバクテリア由来PSI-IsiA構造と大きく異なることを見出しました。
・アナベナPSI-IsiA構造の特徴は、シアノバクテリアIsiAの多様性を示唆しており、光合成生物がどのように光捕集機構を獲得し、進化させてきたのかという謎を紐解く鍵になることが期待されます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)の異分野基礎科学研究所(RIIS)の長尾遼特任講師(現静岡大学農学部准教授)、加藤公児特任准教授(現JASRI研究員)、沈建仁教授と理化学研究所放射光科学研究センターの米倉功治グループディレクター(東北大学多元物質科学研究所教授を併任)、浜口祐研究員(現東北大学多元物質科学研究所准教授)、川上恵典研究員の研究グループは、神戸大学の秋本誠志准教授、東京都立大学の得平茂樹教授、理化学研究所の堂前直ユニットリーダーとの共同研究により、クライオ電子顕微鏡を用いて、シアノバクテリアのアナベナ由来PSI-IsiA超複合体の立体構造解析に成功しました。

 他のシアノバクテリアのPSI-IsiA超複合体と比べると、IsiAサブユニットの発現および配置が大きく異なることを見出しました。シアノバクテリアにおけるIsiAの分子特性は、光合成生物の光捕集機構の進化を考察するうえで重要な指標となることが期待されます。

 本研究成果は日本時間2023年2月17日  、英国の科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。


◆長尾遼特任講師からのひとこと
 アナベナはIsiA遺伝子を4つ持ちます。これまでに報告されているPSI-IsiA構造を持つシアノバクテリアはIsiA遺伝子を1つしか持ちません。なぜシアノバクテリア種間でIsiA遺伝子の数が異なるのでしょうか?本研究は、IsiA遺伝子を複数種持つシアノバクテリアから調製したPSI-IsiAを構造解析した初めての報告になります。
 今後は、アナベナをモデルとし、集光性色素タンパク質の分子進化に踏み込んでいきたいです。


◆論文情報
 論 文 名:“Structure of a monomeric photosystem I core associated with iron-stress-induced-A proteins from Anabaena sp. PCC 7120”
      「アナベナ由来のPSI単量体-IsiA超複合体の立体構造」
 掲 載 紙:Nature Communications
 著  者:Ryo Nagao1,8, Koji Kato1,9, Tasuku Hamaguchi2,10, Yoshifumi Ueno3,11, Naoki Tsuboshita1, Shota Shimizu1, Miyu Furutani3, Shigeki Ehira4, Yoshiki Nakajima1, Keisuke Kawakami2, Takehiro Suzuki5, Naoshi Dohmae5, Seiji Akimoto3, Koji Yonekura2,6,7, and Jian-Ren Shen1
 URL/DOI:10.1038/s44-1
       https://www.nature.com/articles/s41467-023-36504-1

 1岡山大学・異分野基礎科学研究所
 2理化学研究所・放射光科学研究センター
 3神戸大学大学院・理学研究科
 4東京都立大学大学院・理学研究科 生命科学専攻
 5理化学研究所・環境資源科学研究センター
 6東北大学・多元物質科学研究所
 7理化学研究所・理研-JEOL連携センター
 8現所属:静岡大学・農学部
 9現所属:JASRI
 10現所属:東北大学・多元物質科学研究所
 11現所属:東京理科大学・教養教育研究院


◆研究資金
 本研究は、日本学術振興会「基盤研究」(課題番号:JP20K06528、JP20H02914)、日本学術振興会「萌芽研究」(課題番号:JP21K19085)、日本学術振興会「新学術領域研究(研究領域提案型)」(課題番号:JP17H06433)、日本学術振興会「特別推進研究」(課題番号:JP22H04916)、武田科学振興財団、日本医療研究開発機構(AMED)医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)、JST未来社会創造事業(課題番号:JPMJMI20G5)の支援を受け実施しました。


◆詳しいプレスリリースについて
 シアノバクテリアの光化学系I単量体IsiA超複合体の立体構造解明 ~集光性色素タンパク質の進化を紐解く契機に~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20230221-1.pdf


◆参 考
・岡山大学異分野基礎科学研究所(RIIS)
 http://www.riis.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報
・【岡山大学】「強すぎる光」に対する藻類の生存戦略を解明! 強光を受けた際の有用藻類ユーグレナの光エネルギー利用機構を明らかに
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000104.000072793.html
・【岡山大学】光捕集複合体フィコビリソームの単粒子構造解析 -藻類の太陽光エネルギーを吸収するタンパク質構造を解明-
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000072793.html
・【岡山大学】窒素固定を行うアナベナヘテロシストの光捕集機構を解明 ~窒素肥料依存による環境負荷の低減につながる発見~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000353.000072793.html
・【岡山大学】光合成真核生物で初の光化学系I複合体の多量体構造を解明~原核生物から真核生物への進化を解明する糸口に~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000620.000072793.html
・【岡山大学】珪藻の光化学系II-集光性色素タンパク質超分子複合体の立体構造解明 ~集光性色素タンパク質の進化を紐解く糸口に~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000629.000072793.html
・【岡山大学】始原的なシアノバクテリアの光化学系I複合体の立体構造を解明 ~光合成生物の進化を紐解くきっかけに~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000640.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 静岡大学 農学部 准教授 長尾 遼 (ながお りょう)
 TEL:
 Twitter:https://twitter.com/NagryPhotosyn
 YouTube:https://www.youtube.com/@nagry
 Web site:https://nagaolab.wixsite.com/website

 理化学研究所 放射光科学研究センター グループディレクター 米倉功治 (よねくら こうじ)
 (理化学研究所 科技ハブ産連本部 バトンゾーン研究推進プログラム 理研-JEOL連携センター 次世代電子顕微鏡開発連携ユニット ユニットリーダー, 東北大学 多元物質科学研究所 教授)
 TEL:

 岡山大学 異分野基礎科学研究所 所長・教授 沈 建仁(しん けんじん)
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
 TEL:

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001259.000072793.html

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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。

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