緊急事態宣言発出に伴い、政府は「出社率7割減」を目標に掲げ、様々な取り組みをしてきました。最初の緊急事態宣言から1年が過ぎた2021年6月  時点では、テレワーク導入の実態はどのようになっているのでしょうか。

株式会社ネクストレベル(本社所在地:神奈川県横浜市、代表取締役:田中大洋)が運営する転職応援メディア「ミライのお仕事(https://jobseek.ne.jp/)」主体で、働く成人男女948名にテレワーク・リモートワークの現状について調査を行いました。

本調査は、3段階に分けて実施しました。
第1回:テレワークの導入率を調査(成人男女500名)
第2回:テレワークをしている人への調査(成人男女348名)
第3回:テレワークができていない人への調査(成人男女100名)
それぞれの調査から見えてきた、2021年の働き方の現状をお伝えします。


約70%が「コロナ禍以前と働き方は変わらない」

まずは成人男女500名に対して、「テレワークを導入できているか」を調査しました。結果として、約70%の人は「以前と働き方は変わっていない」と回答しました。


さらに詳細な内訳は以下のとおりです。



「週に3回以上テレワークになった」とテレワーク中心の働き方ができている人は、わずか14%でした。
緊急事態宣言中などの期間限定でテレワークを導入しているケースもありましたが、「現時点では以前と同じ働き方」と回答している人も目立ちました。なんとかテレワークを導入したものの、デメリットを解消しきれずに、出社中心へ戻ってしまった企業もあるようです。

ただ、東京都のみに絞ると、「週に3回以上テレワークになった」と回答した人は28.6%にまで上がります。東京都の企業はテレワーク導入に前向きなようです。

また、「仕事が減ってしまった」と回答する人も5.6%いました。逆に、物流業界の方など「仕事が増えた」と回答した方が数名いました。
このデータを見て、政府の掲げる「出社率70%減」にはまだまだ遠い状況であることがわかりました。

100%テレワークができている割合は12%
テレワーク中の方々に絞って、深掘りした調査をしていきました。



週3日以上テレワークを導入している方のうち、100%テレワークになったのは12%でした。また、100%テレワークの方を含み、8割以上のテレワークをしている方が39%でした。
データを見てみると、実際の出社率を減らせる程度にテレワークを導入できている企業はそこまで多いとは言えません。

なぜテレワークに移行できないのか、「テレワークを導入できなかった」と回答した人たちにその背景を聞いてみました。

場所に縛られてしまう仕事はテレワークが導入できない

テレワークを導入できなかった人にその理由を聞いてみました。


◉個人情報や機密書類を扱うため、会社から持ち出せない
◉特殊設備で自宅では作業ができない
◉薬剤師や介護士など必要不可欠な職業


上記のように、場所に縛られる仕事や特殊な設備が必要な仕事であるため、どうしても出社が必要と回答する人が目立ちました。

ただ、「会社のペーパーレス化が進んでいない」「社外からアクセスできるネットワークの準備ができていない」「個人用のノートパソコンがない」など、オンライン化やシステム化など準備が間に合っていなくてできないと回答している人も多いです。
また、経営者や会社の方針で「テレワークをしない」と判断している会社が多いのも事実です。

オンライン化できるのにもかかわらずテレワークを導入できていない人たちに、具体的な理由も聞いてみました。


全員がテレワークができる業種ではないこと、また設備やシステムがテレワークに対応していないことが理由に挙げられますが、会社の方針という部分が大きいです。実際、部署によってはテレワークができる部署もあるのですが、経営者が「リモートしないことが顧客にアピールできるポイントだ」と思っているので、しばらくはテレワークは導入されないと思います。
(44歳男性 東京都 営業アシスタント)
基本的に受発注がFAXなので、それを転送して自宅で作業するのが難しいことと、自宅でのパソコンのスペックが個々にばらばらで、同じ環境下での仕事がむずかしいから。
(49歳男性 千葉県 営業事務)
会社携帯や会社パソコンを各自で持たされている営業マンは在宅勤務だが、システム化がされておらず、紙ベースでの仕事の私たち事務員は、フルタイム出社での勤務です。(時差出勤、時短もなし)
(50歳男性 兵庫県 営業事務)
ペーパーレス化が進んでいないため、会社でないと作業ができないからです。また、各個人にノートパソコンがなく、自宅では作業ができません。
(40歳女性 埼玉県 経理)


リモート中心で働いている方は平均36歳、リモートが導入できなかった方は平均39歳でした。

中でも、「会社の方針」「アナログだから物理的に出社が必要」と回答している方の多くが40〜50代の方です。長年の働き方をこの1年でガラリと変えるのは難しいのかもしれません。こうしたアナログからデジタルへの移行は、国などの外部からのサポートが必要だと感じました。

テレワークを導入した時期、過半数が「1回目の緊急事態宣言時」
さらに、どのタイミングでテレワークが導入されたのかについてもリサーチを行いました。



結果として、テレワークを導入したタイミングは「2020年の4月ごろ」が最多となりました。意外にも、コロナ禍以前からテレワークを導入していた企業は少なく、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが一気に推進されたことが伺われます。

もう少し詳細を見てみましょう。

2020年4月  の早い段階でテレワークに移行できた人が多かった職種は、事務職の30%、営業職の17%、エンジニアの11%です。

事務職やエンジニアはパソコンでの作業が多いため、パソコンやインターネット環境さえ整っていれば自宅での仕事に移行するのも難しくないことは推測できますが、営業職も高い割合でテレワークへ移行できています。

歩いて営業先に訪問するイメージが強い営業ですが、最近は商談や契約もオンラインでできるようになっています。そのため、直接お客さんと会わなくても仕事を進めていけ、システムさえ導入していればスムーズにテレワークに進める職種だということがわかりました。

直近ではアルバイトもテレワークに移行している

また、2020年4月  の段階でテレワークを導入していた人のほとんどが正社員でしたが、「2021年になってからリモートがスタートした」と回答した人のうち、アルバイトの割合が増えていました。数値で言うと、3.4%から20%とかなり差が出ています。

早い段階でテレワークを導入できたのは、1人で仕事を進めていけるような研修や教育が不要な人材でしたが、緊急事態宣言から1年近くたち、アルバイトもテレワークができる準備が整ったと解釈できます。

アルバイトやパートでもテレワークができるとなれば、働き手の選択肢が広がりますね。

テレワークを続けたい?テレワークで感じているメリット・デメリット

今後、テレワークは定着していくのでしょうか。現在テレワークをしている方々へ「今後もテレワークを続けたいか」を聞きました。


一番多かった意見が「今のままテレワークを続けたい」です。次に、「少し出社を増やしたい」との意見が2位に。ずっと家で1人で仕事をするよりも、会社の同僚と会って話す機会が欲しいと感じる人も多いようです。
一方で、「テレワークを減らしたい・したくない」と感じる人は10%いました。

ただ、ほとんどの人は自宅で仕事ができる快適さゆえか、テレワークに対して肯定的です。そのためこの先もテレワークが続きそうですし、テレワーク可の求人は人気が続きそうです。

これだけ多くの人がテレワークを続けたいと回答していますが、その理由について、実際に感じているテレワークのメリットを聞きました。

■ テレワークのメリットは「通勤がない」こと

特に多かった意見は以下です。


◉通勤のストレスがない
◉通勤時間を他のことに充てられる
◉無駄話が減り、仕事の効率が上がった
◉家事や育児に充てる時間が増えた
◉昼食代を節約できるようになった
◉外出することが減り、風邪をひかなくなった
◉運動する時間が増え、健康になった


特に通勤時間の減少など、8〜9割近い方が時間に関するメリットを感じているとのこと。
また、メイクしなくて良い、ヒールを履かなくて良い、スーツを着なくて良い、など働く上でちょっと面倒な準備から解放されたことにもメリットを感じている人が多くいました。

さらに、中には仕事の効率が上がった、健康になった!という意見も多くあり、多くの人にとってテレワークはプラスとなっているようです。

具体的な意見は次の通りです。


まわりの目を気にせずに気楽に仕事が出来るところです。音楽を流しながら楽な格好をして仕事をしており、快適です。あとは気分転換に家のことを出来るので、常に家をキレイに保てるところも気に入っています。あとは食費が安くなりました。
(32歳男性 神奈川県 システムエンジニア)
ライフワークバランスが取りやすいところ。通勤時間がなくなったので、とても健康的な生活スタイルを送れるようになった。運動習慣も増え、料理は毎日自炊できる。仕事中、横から話しかけられて作業が中断されることも少ないので、作業効率や復帰ロスが少なくて、仕事が捗る。
(45歳女性 大阪府 事務)
・出勤時は公共交通機関を利用していたので、リモートになってからは出勤ストレスがない。
・自宅に常にいるため、家族との交流が増えた。
・スキマ時間にささっと家事も出来る
・程よく息抜きが出来る
・外出しないことで風邪ひとつひかなくなった。
(28歳女性 北海道 広告代理店)
集中して仕事に取り組みやすい点。出社する時よりも、業務の精度・効率ともに向上していると感じる。PCを使う業務なら、周りとのコミュニケーションもチャットツールで可能なので、正直わざわざ出社する必要はもうないような気がする。
(23歳男性 岐阜県 事務)
車の開発を行っています。出社して集中的にとったデータを、テレワークで自宅で集中的に解析し、結果を出し、次に進むべき方向性や計画を立案できるので効率がいい面がある。
(61歳男性 広島県 エンジニア)


テレワークのデメリットはコミュニケーションの取りづらさ

一方で、「デメリットはない」と回答している人はおらず、全員何かしらのマイナスポイントも感じていました。
特に多かった点は以下の通りです。


◉電気代が高くなった
◉集中力がもたない
◉回線の状況によっては会議がスムーズにいかない
◉気軽に相談できなくなった
◉文章だけだと伝わりにくい部分があり困る
◉残業が増えた
◉リモートではできないこともあり非効率になった
◉運動不足になった


特にコミュニケーション面で問題を抱えている人が多く、意思疎通がしづらい、ちょっとした質問や確認が滞ると感じている人が多いようです。

また、セキュリティや物理的な問題で会社にいないとできないことも多く、出社とリモートの切り替えの中でどううまく連携をとっていくか、テレワークだけでは限界を感じていると回答する人も目立ちました。

具体的な意見も見てみましょう。


相手の状況がわからず、コミュニケーションが取りにくいところです。チャットや電話はできますが、カメラオフが基本なので、顔色を伺いながらの会話ができません。あとは人間関係が希薄になりました。仲良くなりにくい環境です。
(32歳男性 神奈川県 システムエンジニア)
運動不足。つい食べすぎてしまう。精神的な切り替えができずに、夜まで仕事をしてしまう。
(56歳女性 千葉県 不動産管理)
後輩や同僚とコミュニケーションがやや取りづらく、仕事がどこまで進んでいるかすぐに把握しづらいこと。顔を合わせて打ち合わせができない分、打ち合わせが盛り上がりにくいこと。大事な資料を、PC画面だけでなくプリントして確認したいときに、自宅のプリンターでは性能が悪いこと。光熱費がかかること。
(39歳女性 東京都 編集者)
会社から、通信費や電気代の補助が出るので助かっていますが、自宅に1人オフィスを設置することが大変でした。一応戸建ての住宅ですが、建築したときに個室を減らしリビング中心の間取りにしたので、パーテーションを購入して個室を作りました。ミーティング中は家庭内の音も気になり、家族に静かにするように言っておりその点は迷惑をかけたと思っています。
(53歳男性 東京 財務)
必要な資料が職場にしかなく、こまめな連絡で必要書類を添付してもらう必要があり、効率が悪すぎる。まだまだ印鑑を押さないといけない提出書類が多かったり、お客様に電話をしなきゃいけないと個人持ちのスマホからかけないといけないので、通話料が増えて困っています。
また上司との連絡や、都度の打ち合わせ相談等の意思疎通がうまくいかないときもあり、全体的にもまだまだ効率の悪さをどう解消したらいいのか悩んでいます。
(36歳女性 山形県 事務)


調査結果まとめ:テレワークの導入はまだまだ発展途上
調査結果を通して、テレワークを導入できている企業は決して多いとは言えず、まだまだ発展途上という印象でした。

テレワークのメリットはもちろん大きいですし、多くの人がテレワークを望んでいたことから、今後はスタンダードな働き方として定着していくと思います。一方で、これからの課題は、テレワークを実施し明らかになったデメリットをどう解消していくかが挙げられます。

直近ではデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉も広がりはじめ、DX推進という専門の職業も出てきました。

1年後、2年後にどのような結果になっているか、再調査をして経過をみていきたいと感じました。

【調査概要】
調査方法:インターネットアンケート
アンケート母数:計948名
実施日または時期:2021年05月20日  ~2021年06月04日  
調査実施主体:ミライのお仕事(https://jobseek.ne.jp/
調査会社:株式会社ネクストレベル
分析・執筆:白崎 萌(株式会社ネクストレベル)


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【運営会社】
株式会社ネクストレベル
https://next-level.biz/
横浜・福岡にてWebメディア運営とシステム開発事業を展開。
『最新のマーケティング技術を用いて社会発展を目指す』をミッションとし、2008年の設立より婚活関連のマーケティングを始め、常に最新のマーケティングを取り入れ、多くの情報を発信。

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